学科の教員

生物生産科学科

ジャンル別講師の詳細プロフィール

CONTENTS

渡邊 肇(教授) わたなべ はじめ

所属:生物資源科学部 生物生産科学科
学位:農学博士
専門分野

作物学(作物形態学,作物生理・生態学,栽培学)

主な担当科目

学部・講義
食料生産の将来展望, 作物生態学・栽培学, 資源植物学, あきた地域学
学部・実験実習
化学・生物学実験II, 生物生産科学実験I, 生物生産科学研究室実験, 卒業論文
大学院・講義
植物資源開発・管理科学
大学院・実験実習
生物資源科学演習

最近の研究テーマと内容

はじめに
  現在,地球規模で環境破壊や食料問題が深刻化し,日本農業においても農業従事者の高齢化・後継者不足,耕作放棄地の増加などの問題があります.こうした状況の中で,環境に及ぼす負荷を軽減し,省力・低コストで安定多収穫・高品質を示す,作物栽培技術を開発するための基礎的および応用的研究を行っています.秋田県は,水稲を代表とした,我が国でも重要な食料基地です.また,豊富な水資源,肥沃な土壌,夏季の温暖・多日照などの自然条件に恵まれていると同時に,各種交通手段が発達し,東京などの大消費地にもアクセス可能で,作物栽培にとって,とても好適な立地条件にあります.このような恵まれた環境条件で,将来の秋田県,日本や世界の食料問題と環境問題を考えながら,研究を行って行きたいと考えています.


研究テーマ
3つの大きなテーマをもとに,その中に複数のサブテーマがあります.研究例の一部を紹介します.

1.水稲と畑作物の省力・低コスト,環境保全型栽培に関する研究
古来,「一寸一石」というように,田畑を深く耕すことが,作物生産にとって重要と考えられていました.近年では,新しい農業機械や肥料の開発がすすみ,耕さなくてもよい,不耕起栽培が可能となっています.不耕起栽培では,耕起の省略による省力化ばかりでなく,化石燃料から排出される二酸化炭素やメタンガス(共に温室効果ガス)の排出抑制効果があります.その他,生物多様性保全の効果もあるとされています.また,稲作では,田植えを行う移植栽培が主流ですが,水田に直接,播種する直播栽培もあります.私たちは,これら,不耕起栽培と直播栽培において収量と品質の高位安定化をめざしています.その他,食品残渣などの有機性資源を活用した循環型農業や,減農薬・減化学肥料栽培,有機栽培に関する研究を,実験室と実際の生産現場を拠点に行っています.

2.水稲と畑作物の形態,生理・生態的特性の解析と生産性向上に関する研究
作物の栽培は多様な環境条件下で行われるため,さまざまな課題がでてきます.これらの課題を解決するには,作物の形態や生理・生態的特性を理解することがとても重要です.例えば,イネの直播栽培では,播種後に,酸素不足,土壌還元,水分不足などの多様な環境ストレスをうけます.私たちは,直播栽培において環境ストレスを克服し,初期生育を促進するために,酸素条件や土壌条件などに対する環境応答の点から検討しています.具体的には,幼植物の生育に関するメカニズムを植物ホルモンに対する反応性や成長・発育に関係する遺伝子発現の点から検討しています.

3.新規有用作物の探索と高品質安定生産技術に関する研究
(水田生態系を活用した転作作物,水性作物の有効利用)
日本では,約3割をこえる水田が減反田や耕作放棄水田となっています.水田はコメを作るのみならず,洪水を防止するなど多くの機能をもっています.そのため,水田生態系を保全することはとても重要です.また,バイオマスの活用は,二酸化炭素の排出抑制による地球温暖化や,資源の有効利用による持続的社会の形成に貢献し,地域の活性化や雇用の拡大につながるなど,作物生産の新しい場面を開拓すると考えられます.私たちは水田生態系を維持する作物について,水性作物であるマコモタケ,バイオマス作物としては,茎に糖を蓄積し,乾物生産能力が極めて高いスイートソルガムに着目し,これらの作物の省力・低コストで環境保全的な栽培技術について検討しています.その他,秋田県や日本の農業環境に適する,新しい作物を探索し,これらの作物に有効な栽培法を検討しています.

その他の課題
世界の食料生産や作物生産が行われる環境にも目を向ける必要があると考えています.東南アジアなどの洪水常襲地域で栽培されている,深水稲や浮稲について現地の生産者や研究者と共同で研究を行っています.

研究手法
作物学のカバーする領域はとても広いです.研究の遂行や得られた結果を,実際の栽培現場に適用するには,多様な知識,技術,経験が必要です.作物学に加え,作物学の周辺分野にも着目することが必要で,国内外の政治,経済,政策,生産者や消費者のニーズも考慮しながら研究する必要があります.このような作物学の性格を理解しながら,フィールドで作物の生育や収量の調査を行い,実験室内では作物の形態観察,体内成分や酵素などの分析,遺伝子の発現解析,土壌の成分分析などを行います.研究課題の進捗状況や到達目標に応じて,新しい考え方や実験手法を随時,取り入れていくようにしています.
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技術相談に応じられる分野

イネの栽培管理(育苗,水管理,肥培管理など),イネの生育診断,イネの直播栽培,作物の環境保全型栽培,作物に対する農業資材の施用効果(植物成長調整物質,肥料,土壌改良資材,有機質資材,未利用資源など),バイオマスの利活用

指導できる自主研究

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